2017年1月から、ユニークなロードムービーが公開される。映画『0円キッチン』は、冷蔵庫で眠っている食材や捨てられる食材を探し求め、それを使って調理していく旅物語。舞台になるのは、オーストリア、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランスの5か国。旅に使うのは、植物油で走れるように改造した車で、 ゴミ箱で作った特製キッチントレーラーを引っ張っていく。
世界で生産される食料の3分の1(年間13億トン)が廃棄される
監督のダーヴィドは「どうやったら捨てられてしまう食材を救い出し、おいしい料理に変えることができるのだろう?」と問いかけ、廃棄される予定だった食材を救出し、廃棄食材料理を作って出会った人々に届けていく。同時に、それぞれの国で食の問題に取り組む活動家たちと出会い、アイデアを学んでいく。
オーストリアでは一般家庭を訪問し、冷蔵庫の中を抜き打ちチェック。ドイツでは農家を訪問し、規格外野菜が売れない実態を知る。ベルギーでは欧州議会の食堂でゲリラ的に廃棄食材料理を作り、議員たちに食料廃棄問題を訴える。オランダでは未来の食として注目される昆虫で料理を作り小学生たちに食べてもらう。フランスでは1日料理人として漁船に乗り込み、捨てられてしまう魚で料理を作る。
賞味期限切れのもの、ゴミ箱に廃棄されたもの、野草や果実など身近にあるものなどを活用して、「まだおいしく食べられる」ことを伝えていくのだ。
使った廃油は 684.5L、走行距離 5,079km、救出した食材 690kg
監督:ダーヴィド・グロス、ゲオルク・ミッシュ
2015年/オーストリア/81分
配給:ユナイテッドピープル
《ドーヴィルグリーン国際映画祭 2015 ドキュメンタリー部門 銀賞》
《カンヌ コーポレートメディア&TV 大賞 2015 自然・環境・ エコロジー部門 シルバードルフィン賞》
公式サイト
http://unitedpeople.jp/wastecooking/
EUでは、2025年までに食料廃棄量を半減させる方針
2014年に「ヨーロッパ反食品廃棄年」として、2020年までに食料廃棄物を半減させるための対策を、欧州議会加盟国に義務づけた。2015年5月にフランスでは、スーパーマーケットに対して食品廃棄を禁止する法案が可決された。売れ残った食品のうち、まだ食べられるものは慈善団体へ寄付するか、家畜の飼料か農業用の堆肥に利用することを義務づけている。
フランスでは、毎年約2200万トンの食料が廃棄されており、そのうち本来食べられるのに廃棄されている「食品ロス」は約710万トン。67%が一般家庭、15%がレストラン、11%が小売店で廃棄される。ちなみにEU内では、年間総計9000万トン、ひとり当たり180kgが廃棄されている。
日本は食糧の半分以上を輸入しながら、世界有数の食料廃棄国に
一方、日本は食糧の約7割(年間5800万トン)を世界から輸入していながら、その3分の1(1940万トン)を捨てているのをご存知だろうか? その廃棄量は、世界の食料援助総量740万トンをはるかに上回り、3000万人分(途上国の5000万人分)の年間食料に匹敵する。
この半分以上は家庭から出る生ゴミで、金額に換算すると年間11兆円(農水産業の生産額とほぼ同じ)で、残飯を処理する費用に2兆円が使われているという。また、一人当たりの食品廃棄量は134kg、アメリカ・フランスに続く世界有数の食料廃棄国なのだ。
さまざまな商品が品切れせずに並んでいることを消費者が求め、「売り切れ」ていると文句を言う人がいる。だから廃棄するのを覚悟して商品を用意しておかなければいけないのだ。
Reduce+Reuse+Recycle+Respect+=MOTTAINAI
環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんは、2005年に来日したときに「もったいない」という日本語に感銘を受け、世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱した。
ドイツでは廃棄される食べ物で暮らす人が「フードシェアリング」という活動を始めた。どの街でどんな食品が提供されているかWebサイトで見ることができ、必要な人は無料で持ち帰ることができる。
スペインでは「連帯冷蔵庫」という名前の公共の冷蔵庫が設置された。自宅やレストランで余った料理や、使わなかった食材を入れる冷蔵庫で、食品廃棄を減らすと同時に、必要とする人に食べ物を届けることができる。
同じような取り組みはアメリカでも始まった。「Little Free Pantry」では、パンや缶詰、日用品をおすそわけできる(自由に持ち帰れる)ボックスが設置されている。
フランスの市場で始まった「La Tente des Glaneurs」は、売れ残りの食料を無料で配布している。フランス国内に支部37か所を数え、さらに国境を越えてスペインやベルギーに広がっている。
イギリスでは、賞味期限が切れて廃棄されていた食料を使い、料理を提供するレストラン「Bristol Skipchen」もオープンした。
映画『0円キッチン』をきっかけに、自分たちに何ができるのか、ちょっと考えてみてはどうだろうか?