「お金がなくても豊かに暮らせる」ことを実験

この実験で証明したいのは、お金がなくても「生き延びられること」ではなく「豊かに暮らせること」だ――1年間お金を使わずに生活する実験をした29歳の若者の記事がイギリスのテレビや新聞で紹介されるや、世界中から取材が殺到し、大きな反響を呼んだ。著者は、不用品交換で入手したトレーラーハウスに太陽光発電パネルをとりつけて暮らし、半自給自足の生活を営む。手作りのロケットストーブで調理し、歯磨き粉や石鹸などの生活用品は、植物、廃材などから手作りする。衣類は不要品交換会を主催し、移動手段は自転車。本書は、彼の1年間の金なし生活をユーモラスな筆致で綴った体験記である。貨幣経済を根源から問い直し、真の「幸福」とは「自由」とは何かを問いかけてくる、現代の『森の生活』。世界の10の言語に翻訳され、14か国で刊行。

『ぼくはお金を使わずに生きることにした』
著 者/マーク ボイル
翻 訳/吉田 奈緒子
発行所/紀伊國屋書店
初 版/2011年11月
定 価/1600円+税
A5判・288頁・並製
ISBN978-4314010870

【目次】
プロローグ

1. なぜ「カネなし」を選ぶのか
断絶の度合い/負債としてのお金/負債がもたらす競争社会/お金かコミュニティーか――安心感の源/株式会社「地球」/売ることと与えることの差異/カネなしになる方法/「自分が変化になりなさい」

2.カネなし生活のルール
一、「カネなし」の大原則/二、「フツー」の法則/三、ペイ・フォワードの法則/四、尊重の法則/五、「化石燃料不使用」の法則/六、「料金前払いなし」の法則

3.準備を整える
ぼくの消費行動を解剖する/インフラを構築する
コラム: タダで物を手に入れる/ロケットストーブの作り方

4.無買日前夜
本番一週間前/無買日前夜、2008年11月28日
コラム:カネなしの通信手段

5.いよいよスタート
フリーエコノミー・パーティー

6.カネなしの日常
「貧困」生活第一週/カネなし生活の典型的な一日
コラム:洗顔化粧品なしで清潔を保つ

7.無謀な作戦
娯楽/パンクの問題/「スロー」ライフ
コラム:本と紙を無料で

8.カネなしのクリスマス
現金を持たないクリスマスとは/おおみそか/冷蔵庫への帰還
コラム:ヒッチハイクのコツ/環境への影響が小さい移動手段

9.空腹の季節
エネルギー枯渇の季節
コラム:食料の野外採集/キノコで紙とインクを作る

10.春の到来
斧をふるって/恋愛問題/二杯のお茶…/富と健康は比例するのか
コラム:セイヨウオオバコの花粉症対策

11.招かれざる客と遠方の同志
招かれざる客/海外にいたカネなしの同志
コラム:環境への負荷の小さい住居

12.夏
自転車に乗って/カネなしの夏の食事/タダのランチはない?/フェスティバルの季節/地元フリーエコノミー・コミュニティーの活用
コラム:タダ酒!/タダで楽しむ/タダで宿泊する

13.嵐の前の静けさ
野外食料採集の冒険/沈黙の一週間/メディアの嵐 ver.2.0
コラム:タダでファッションを

14.一巻の終わり?
フリーエコノミー・フェスティバル2009/続けるべきかやめるべきか(それが問題だ)/決心/フリーエコノミー・コミュニティーの長期的構想/夢と現実のはざまで
コラム:おむついらずの子育て/タダで月経に対処する

15.カネなし生活一年の教訓
他人を過小評価しないこと/中間地点としての地域通貨/地域社会の中での自給/将来に不可欠なスキル/与え合いの有機的循環/お金は手段の一つにすぎない/必要は発明の母/物の本当の価値/最後に一言

エピローグ

【著者紹介】
マーク・ボイル:1979年、アイルランド生まれ。大学で経済学を学んだ後、渡英。オーガニック食品業界を経て、2007年、ブリストルでフリーエコノミー(無銭経済)運動を創始。2008年の「国際無買デー」から1年間お金を一切使わずに暮らす実験を決行すると、世界中から取材が殺到し、大きな反響を呼んだ。現在は、「地域社会の中での自給」をめざし、お金がいらない暮らしのモデルビレッジを設立準備中。
彼の主宰する、フリーエコノミー・コミュニティーのウェブサイト(justfortheloveofit.org)には、160カ国34,843人が参加し、461,766種類のスキルと、95,088個の道具と554箇所の空間をシェアしている(2011年10月末現在)。

吉田奈緒子:1968年生まれ。東京外国語大学インド・パーキスターン語学科卒。英国エセックス大学修士課程(社会言語学専攻)修了。現在、千葉・南房総で「半農半翻訳」の生活を送っている。

【編集者からのコメント】
究極の節約生活の本ではありません。著者は、自然と共にある生活から消費社会を見つめ直し、「分かち合い(シェア)」をベースにした新しい社会のあり方を提案、人間同士の絆とコミュニティの再生をめざしています。「食」や「エネルギー」を自給する暮らしに関心が集まり、人々が自分にとっての「豊かさ」とは何かを問い直しはじめている現在、多くの方に読んでいただきたい一冊です。

この本の中で「お金を使わずに生活する」ことによる「惨めさ」はほとんど感じられない。むしろ不思議な「豊かさ」さえ感じさせる。生活のためのサバイバルの知恵を身につけて行く様子は読んでいて楽しい。単に「お金を使わない」というだけではなく、広い意味での思想の実践であり新しい経済の試みなのである。オルタナティブな生活と未来のために、ぜひ多くの人に読まれて欲しい。
――毛利嘉孝さん(東京藝術大学准教授)

文明批判でありながら、まだ誰も気付いていない可能性を掘り当てる大冒険としても読める多層的な本だ。この本が伝えていることは、原発事故が未だ収束せず、今後どのような生活が待ち受けているのか分からず思考停止になってしまっている私たちには大きなヒントになる。
――坂口恭平さん(建築家/作家)

マーク・ボイルは、金なし生活の過程で遭遇する数多の困難を解決するたびに新たなスキルを習得し、逞しく、そして自由になっていく。それはお金では買えない宝物だ。これを読み終える頃、読者には新たな視点からの発想が生まれているだろう。私もこんな生活に挑戦してみたい。―― 大貫妙子さん(シンガー&ソング・ライター)

マーク・ボイル – Wikipedia
マーク・ボイル(Mark Boyle、1979年5月8日 – )は、イギリス在住の自由経済運動の活動家である。
アイルランド ドニゴール州出身。ゴールウェイ・メイヨー工科大学(Galway-Mayo Institute of Technology)で経済学と経営学を学び、有機野菜を販売する企業に就職。サラリーマンのころの営業成績は大変良く、高収入を得たが、一方で金銭を介在させる生活に疑問を感じるようになった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/マーク・ボイル

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